愛は打ち砕かれて、降り積もる雪。薄氷の上を歩く。溺れた人々が付いて来る――氷の下から。私は決して落ちまいと、決意して踏む。土、は白い。対岸はなく。
誰しもが同じように、同じことを思い、同じことで涙し、同じことに苦しむ。と言うことを、机上にて知る。ビール、コーヒー、ケーキ。私は煙のように霧散する言葉を目で追う。あいしている、と言うことは、儚い。そして、とうとい。
君の目に映るものも、君の目から落ちるものも、君の目をくらますものも、君の目を覚ますものも、全て好きだ。憎むべきものがない。あまりにも、生きているので。私の眼球は全てを見届けようと見開き、言葉のない君の顔を追う。ゆっくりと、雪が積もる。
やがて
割れた小さな裂け目から溢れ出す水に巻き込まれ吸い込まれ満たされて周囲の山々も沈むだろう。足は凍り、息は凍り、見開いた眼球は凍り、――皆、生きているのかも分からない。踏み締める氷、溶け始めるのは燃え始める体温によると言うよりは、携えた愛によって。
そして
打ち砕かれた白い草原に小さな、花。
冷たい夜の中でも誰かが、オレンジの電灯のようにぱっと、笑っている。と言うことにしておく。まとまらない髪を風に預けて、こいで行く自転車のペダルだけ軽やかに、運ぶ。私を。街を。今日の終わりを。明日へ。
ささやかなことばで、ほめられた。嬉しかった。それなのに体の奥で、肉と骨とは裂けた。どうしてなのだろう。嬉しいから笑うのに、泣きたくなってしまう。
わたしたちは知らないので、お互いに、お互いを勝手に想像し合う。コミュニケーションは想像力がなければ成り立たない。けど、ちぐはぐなお互い。私もどこかで、誰かの体の奥の肉と骨とをしたたかに、傷付けているだろう。何の悪気もなく。
触れられないまま、日々の波の向こうで、笑っている。きみ、かみさま、おひさま、おつきさまのダンス。幻想に魅せられた。と思った。生きて行くことはままならない。星だけが落ちて行く。
ささやかなことばで誰かを、あたためられたらいいね。こんな寒い夜には、オレンジの明かりで、照らして。裂けた肉と骨の間から涙が溢れる。死ぬことも出来ない。から、笑っている。
・入選しました
詩と批評の雑誌『ユリイカ』12月号の「今月の作品」(詩の投稿欄)にて、入選しました。「ねなしぐさ」と言う詩です。誌面に掲載されています。
今年の2月から、社会的にも、人間的にも、「ねなしぐさ」状態の自分を書き留めておきたいと思って、書いた詩です。「どうしようもねぇなぁ」と笑って読んでもらえたらいいな、と思って書きましたが、選評で、とても丁寧に読んでくださっていて、嬉しくも少し恥ずかしい気持ちでした。ありがとうございます。個人的にも、丁寧に書けた詩だと思います。
12月号と言うことで、今年の投稿も終わりました。とても有難いことに(自分でもびっくりで、信じられないほどなのですが)、2月号〜12月号のうち11月号を除いて、入選することができました。これを励みに、これからも頑張ります。精進します。
流されて、流された涙だった。かろうじて明日だけはあった。その繋がりの果てにいま、があると言うことを、私は知ってしまう。流されて、流された日々の、わだかまりが空に浮かんで。
こえ、越えて、凍えて行くいき、行き着く所もなく。トンネルの先には必ず出口があると、信じるのは容易い。歩いても、歩いても、辿り着けない。
何もかもが夢のように、もうこのまま、崩れて消えて行くのなら、目を閉じていた方が良かったと思ってしまう、私は意気地なし。振り返る間もなく閉じられた扉の向こうにはすでに、私の見ることのない新しい景色、広がっていて。
そこでどうやって生きて行くの。尋ねて、こえが、戻って来る。あなたはそこでどうやって生きて行くの。吐き出した息は、何の答えにもならない。ねぇ、そこでどうやって生きて行くの。こだまする、こだまする、こだまする。トンネルの向こう、こえ、戻らない。
いつかゆっくりと死ぬ。気付かぬ間に、ひそやかに。流されたものの数だけ、また新しい雫、生まれて。顔を上げると空ばかりある。流れて行く。